研究概要 |
不完全酵母Candida tropicalisのペルオキシソームは脂胞酸のβ-酸化系酵素等が局在するオルガネラであって、脂胞酸等によって著しく誘導形成される。このオルガネラの構成蛋白質(PXP)を支配する多数のゲノム遺伝子をクローニングしたところ、その多くは染色体上にクラスターを成して存在していた。その中で発現量の多い3種類の遺伝子PO×2,PO×4,PO×5(それぞれP×P-2,P×P-4,P×P-5を支配する)の間には高い相同性が認められた。これらの遺伝子とその発現産物の比較から遺伝子の発現と蛋白質の局在化に関する構造的特徴を明らかにすることを試みて以下の成果を得た。 1.P×P-4とP×P-5は基質特異性等に若干相異のある2種類の脂胞酸CoA酸化酵素のサブユニット、P×P-2はP×P-4と等モル複合体を形成する蛋白質であった。3者はいずれもサブユニットあたり1個のフラビンを含み、構造的、機能的に強い関連性をもつ多重遺伝子族の産物であった。蛋白化学的に決定された3者のN末端約20残基のアミノ酸配列には有意な共通性が認められず、また分泌蛋白質やミトコンドリア蛋白質のN末端局在化信号配列との類似性も見出されなかった。 2.上記3種類の遺伝子とその隣接領域の完全な塩基配列を決定し、5´上流の調節領域を比較したところ2種類の共通配列が見出された。一方は8塩基対の短い反復配列,他方は17塩基対から成る1回転対称型配列であって共に固有の発現調節信号である可能性が示唆された。 3.塩基配列から推定されたアミノ酸配列を上記成熟PXPのN末端配列と比較した結果、これらのPXPは翻訳後の局在化の過程でN末端ペプチドの切断を受けていないことが明らかになった。この結果はペルオキシソーム蛋白質の局在化機構が分泌蛋質がミトコンドリア蛋白質のそれとは本質的に異なるものであることを結論させた。
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