研究概要 |
植物ではDNA複製が植物ホルモンによって支配されることが知られている。しかし、詳細な分子機構は不明である。本研究では、ジベレリン(【GA_3】)によって発現が制御される遺伝子のクローニングを当面の目標としている。 矮性のエンドウマメの種子を吸水させ、3日間【GA_3】欠の状態で生長させてから2日間【GA_3】をあたえた。芽生えの子葉以外の部分からグアニジウム,チオシアネート法で全細胞RNAを抽出、mAP紙を用いてポリA(+)RNAを調製した。次に、逆転写酵素でcDNAを合成し、λgt11によってcDNAライブラリーを作成した。そのなかから【GA_3】によって発現された遺伝子のcDNAクローンを選択する作業を進めている。 われわれは、ソラマメ種子の発芽胚で、核DNAの複製が不連続的様式に従うことを1975年に報告し、その後、ソラマメの岡崎断片の大きさが5〜6Sで、さらに、8〜9S,10〜11Sの中間体分子の存在も示している。この最初の単鎖DNAと中間体分子の普遍性を、ニンジンの根の培養組織を材料にして調査した。 ニンジンの根組織片は、2,4-Dを含む培地に移すと同調的にDNA合成が開始されるが、その際、或種の高度反復配列DNAが他のDNA成分より早くから複製されることをわれわれは明らかにしている。(長谷達1979,加藤と谷藤1986)。今回の調査によると、ニンジンの岡崎断片は5〜6Sで、さらに中間体分子としては、9〜10S,11〜12S,20S,25Sの少くとも4種類の分子の存在することが明らかになった。そして、大部分のDNA成分は、時間経過とともに連結して長鎖のDNAに成長するが、ニンジンの早期複製型のDNAである反復配列のDNAは、この連結反応が2時間経過してもおこらぬことが証明された。これは、DNA複製の過程が、DNA分子種によって異なることを示した事例で重要な知見だと思われる。
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