研究概要 |
【Ca^(2+)】濃度の一過的上昇が【Ca^(2+)】/カルモジュリン(CaM)依存性NADキナーゼを活性化し、細胞内NADPの上昇をもたらすと考えられるが、そのためには【Ca^(2+)】濃度変化が起る細胞内の場に、NADキナーゼとCaMが存在しなくてはならない。そこでこれらの細胞内分布をまず調査した。 エンドウとコムギの緑葉では、NADキナーゼは大部分が葉緑体に分布した。葉緑体のNADキナーゼは、包膜とストロマに分布し、包膜の酵素のみがCaM依存性であった。黄化葉ではNADキナーゼはエチオプラストに存在した。また緑葉では植物の令と共に葉緑体の分布割合が低下し、可溶分画の分布割合が上昇した。 CaMは90%以上が可溶分画に分布し、1-2%が葉緑体に、数%がミトコンドリアに分布した。葉緑体ストロマにはほとんど検出されなかった。従って、CaM依存性NADキナーゼは、葉緑体やエチオプラストの包膜に存在し、細胞質の【Ca^(2+)】濃度変化により、細胞質に分布するCaMによって活性化され、細胞質のNADPレベルを上昇させるものと考えられる。 トウモロコシ緑葉では、NADキナーゼの80%以上が可溶分画に存在し、葉緑体には10%程度しか分布しなかった。可溶分画のNADキナーゼの60%がCaM依存性であった。黄化葉ではエチオプラストに20数%,ミトコンドリアに30数%,可溶分画に約40%が分布した。エチオプラストとミトコンドリアのNADキナーゼは全てCaM依存性であった。従って、黄化葉と緑葉とでは、CaM依存性NADキナーゼの生理的過程における役割が異っていよう。 既に報告されているNADキナーゼの活性化にフィトクロームが関与している可能性を、黄化トウモロコシについて検討したが、赤色光,近赤外光の照射ともに、トウモロコシ細胞のNADP/NAD比に何等影響を与えなかった。
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