研究概要 |
オーキシンによって引き起こされる植物細胞の伸長生長は細胞壁のゆるみによって引き起こされると考えられている。しかし、長い時間持続する生長は必ずしも細胞壁のゆるみだけでは説明が出来ない。細胞壁の合成が大きな役割を持っている可能性がある。このことを調べるために、ガラクトースの細胞壁合成阻害作用を利用した。ガラクトースが特異性のたかい細胞壁の合成阻害物質であることは先に報告している。ガラクトースがどのような機構を通して細胞壁の合成を阻害するのかを明らかにすることによって細胞壁の伸長生長の維持における役割を明確にすることが出来ると考えられる。そこで、ガラストースの阻害の機構について検討をおこなった。その結果、ガラクトースは細胞壁の合成の基質となるUDPグルコースの合成を阻害することがわかった。 ところが、ガラクトースによって阻害をうける植物とうけない植物があることがわかった。このように植物によってガラクトースの作用が異なることの原因を明らかにすれば、ガラクトースの阻害の機構があきらかになり、さらには細胞伸長における細胞壁の合成のもつ意味が明らかになると考えた。10種ほどの植物を調べた限りでは、主として、単子葉植物ではガラクトースによって生長が阻害され、双子葉植物は阻害されない。これらの植物比較検討した結果、単子葉植物のオートムギ,トウモロコシ,コムギなどではUDPグルコース合成酸素はガラクトース-ノーリン酸によって阻害をうけることが分かった。これに対して、双子葉植物のアズキ,モヤシマメ,キウリなどではUDPグルコース合成は阻害を受けることがなかった。このことからガラクトースの阻害作用は、ガラクトースが細胞に取りこまれリン酸化され、ガラクトース-1-リン酸となってUDPグルコースの合成を阻害するのであると結論される。
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