研究概要 |
無脊椎動物の巨大分子酸素担体の精密酸素平衡曲線を測定・解析して、アロステリック効果発現の機序を解明する目的で、以下の研究を行なった。 1.酸素平衡曲線自動測定装置に、NEC製パーソナルコンピュータPC-98XAを接続し、酸素平衡データを実時間収集し、磁気ディスクに記録したデータを、アロステリック・モデルに従って解析するためのソフトウェアの開発を行なった。 2.アメリカツリミミズの巨大分子ヘモグロビン(Hb)の酸素平衡曲線を、pH、塩の種類などに関する種々の溶液条件および温度条件において測定し、Hillプロットを用いて解析した。Hill係数はpHに対して強い依存性を示し、その最大値は7.9という高い値を示した。このHbの酸素親和性は、脊椎動物の低分子Hbとは異なり、陰イオンではなく、陽イオン、しかも1価よりも2価の陽イオン(【Ca^(2+)】,【Mg^(2+)】など)によって、最も有効に調節されていることが明らかになった。 3.上記Hbの4種の構成サブユニットの種々の会合状態での酸素平衡を解析したところ、3量体はBohr効果や【Ca^(2+)】の効果を示すが、協同効果は4つ目のサブユニットが会合して始めて発現することが明らかになった。 4.ドロケヤリのクロロクルオリン,ツリミミズのHb,シャミセンガイのヘムエリスリンの酸素平衡データを、線型化したMonod-Wyman-Chargeuxプロットを用いて解析したところ、クロロクルオリンでは6個のヘムを有する構造単位が、また、ヘムエリスリンでは8個の酸素結合部位を有する単位、すなわち分子全体が、それぞれ協同効果の及ぶアロステリック単位であることが明らかになった。ツリミミズHbでは、12ヘム単位を最大として、pH条件によって、その大きさが変動した。
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