研究概要 |
遺伝子工学によって目的に応じたタンパク質を自在につくりだすための基礎実験としてニワトリリゾチームを素材にしてまずその機能を徹底的に解明する目的で以下の実験を行なった。1.Dr.Sch【u!¨】z(西ドイツ)より入手したリゾチーム遺伝子を当教室で開発したpUC9系の発現ベクターpKP1500のtacプロモーターの下流に開始コドン(ATG)を介して組込み大腸菌内でリゾチームが大量に発現する培養条件を設定した。最適条件でのリゾチームの生産量は全タンパク質の22%に達した。入手した遺伝子にはアミノ酸レベルで2つの変異(Ala31→Val,Asn106→Ser)があることおよび発現したリゾチームにはN末端にMetが付加していることを塩基配列およびアミノ酸配列により確認した。2.サイトディレクテッドムタジェネシスの手法を確立し、上記2箇所のアミノ酸置換を天然型に戻した。この過程で4種の変異リゾチームを得た。3.この系ではリゾチームは不活性な不溶性タンパク質として生産されるが、この変性リゾチームを約3日で単離できる簡便な精製法を開発した。4.得られたリゾチームは不活性なので還元後SH-SS交換反応で活性化を試みた。Ala31→Valの変異を持つ2種のリゾチームは、全く活性化されなかったが、この変異を持たない2種のリゾチームは活性化された。それらの天然リゾチームに対する比活性は、N末端にMetが付加しただけのもので96%,さらにAsn106→Serの置換を持つもので約60%であった。当初の計画のGlu35→Gln,Asp52→Asnの置換は平行して進めていた化学修飾が先行したので予定から外したが、現在Glu35→Asp,Glu35→His,Asp52→GluおよびAsp101→Lysの置換を行なっている。また酵母系で変異リゾチームを生産させる必要が生じる場合に備えて酵母の発現分泌ベクターの作製も終了した。
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