研究概要 |
1.カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)のラット下位脳幹における個体発生学的変遷について免疫組織化学的に実験を行なった。三叉神経脊髄路や孤束のCGRP陽性線維が最も早く胎生18日目に出現した。この時期には陽性ニューロンが脳内にみられないことからこれらは末梢由来であると思われた。続いて舌下神経核や願面神経核の運動ニューロン内に免疫活性が観察された。一方、蝸牛神経核,上オリーブ核,外側毛帯核,下丘,上丘,内側膝状体などのCGRP陽性構造は、知覚線維や運動ニューロン内のCGRP免疫活性の出現より遅く、出生後になって観察された。以上の結果からCGRP免疫活性の発現は聴覚や視覚に関与する核で遅く、脳の機能の発達に平行して発現することが示唆された。 2.【^3H】-neurotensin(NT)結合部位のラット脳における個体発生について検討した結果、尾側大脳皮質の【^3H】-NT結合部位が幼若期には高密度分布するが、成熟するにつれ減少すること、これは黒質での結合部位が成熟動物で密になるのと対照的であることを明らかにした。3.ラット脳におけるmuscarinic acetylcholine receptors(mACchR)の個体発生を【M_1】と【M_2】のサブタイプ別にin vitro macroautoradiographyにより観察した。標識リガンドとして総mAchRには【^3H】-QNBを、【M_1】レセプターには【^3H】-pirenzepine(pZ)を用いた。総mAChR,【M_1】レセプター共に成熟ラットでは線条体,大脳皮質,海馬に多く見られ、これらの部位では個体発生に伴いレセプターが増加していった。しかし大脳皮質においては【^3H】-PZ結果部位はdiffuseな分布を示すのに対し、【^3H】-QNBは層状分布を示した。この【M_2】レセプターの層状分布は生後約7日目から明瞭になった。また下位脳幹と小脳では総mAChRは固有の発生パターンを示したが、【M_1】レセプターは発生のどの過程でも観察されなかった。以上のことから【M_1】と【M_2】レセプターはindependentに分化していくことが示唆された。
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