研究概要 |
下部側頭葉皮質のTEa,TEp,TEO3視覚学習野と扁桃核の9細分核間の順行性(視覚野から扁桃核)及び逆行性投射の有無と投射様式(起始部位,密度,範囲など)を、WGA-HRP法を用いて、検討した。 主な所見を述べると次のようになる。1.逆行性投射.(a).逆行性投射は順行性投射よりもより広範囲にわたり、しかもより複雑である。逆行性投射は扁桃核外側基底核から全視野に、程度の差はあっても、投射している。(b).扁桃核外側基底核からの逆行性投射の密度と広がりは、下部側頭葉皮質の前方領野(即ち、階層構造上でより上位の領野;TEa野)への投射ほど密であり、外側基底核内のより広範部位から投射している。(C).より下位の領野(TEO野)ほど外側基底核の背後方部から投射を受けている。(d).前方視覚野(TEa野とTEp野)は外側基底核以外に、副基底核内側基底核からも投射を受けている。 2.順行性投射.(a).扁桃核への順行性投射は前方視覚野(TEa野とTEp野)のみから起源している。主要標的投射核は外側核である。この他、外側基底核背側部へも小数の投射がある。(b).TEO野から扁桃核への直接投射はない。(c).視覚野と扁桃核との投射は相互投射様式を示さない。 以上の解剖学的所見から、次のことが推論される。(a).視覚皮質と扁桃核との干渉機構では、扁桃核への視覚情報は下部側頭葉皮質のTEa野とTEp野から入力されるが、同時に、扁桃核からの情報は全視覚皮質に出力される。しかも、出力系が入力系より重要である。(b).扁桃核への入力核が外側核で、出力核が外側基底核であるという入出力核の分離という所見は、外側核と外側基底核とは互に直接核間投射がないという所見と相まって、入力視情報は他の扁桃核で処理され、最終的に外側基底核に送られ、それから視覚皮質諸領野に出力されることを示す。
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