研究概要 |
1.生体現象の連続観察,並びに冠動脈繰り返し閉塞システムの確立。 雑種成犬をペントバルビタールで麻酔し、人工呼吸下に清潔手術操作を行い、左心室内に植え込み型血圧計,前下行枝と回旋枝領域の心内膜下に局所心室壁運動を記録するための超音波微小クリスタルを各一対留置し、それぞれの心外膜側に心電図用電極を縫着した。回旋枝に血流プローブとカフ型閉塞器を囲繞し閉胸した。手術から回復後、無麻酔,無拘束下に生体現象を昼夜を問わず連続測定する為4チャンネルFM/FM送受信装置を開発した。即ち超小型4チャンネル増巾器とFM送信機をバックパック法によって犬に背負わせた。これらの信号(左心室圧,2か所における局所壁運動,心電図)はモニターで観察すると同時にデータレコーダにも記録した。心筋虚血の持続時間が副血行路の発達にどの様な影響を与えるか検討する為、15秒間と2分間の冠動脈閉塞をそれぞれ4分毎と30分毎に反復した。この為、冠動脈閉塞をモーターに連動したカフ型閉塞器で行い、コマンドをAM/AMテレメトリーシステムで供給した。 2.心筋虚血持続時間の副血行路発達に及ぼす影響。 一日の累計冠動脈閉塞時間は等しく一回当りの冠動脈閉塞持続時間の異なる短時間の反復虚血刺激を、(1)2分間冠閉塞を30分間隔で繰り返すグループ(第一群)と(2)15秒の冠閉塞を4分間隔で繰り返すグループ(第二群)について行った。尚、第二群では副血行路の発達度を評価するため、一日一回2分間の冠動脈閉塞を行った。第一群11頭は125-478(3-11日)回の冠動脈閉塞で副血行路が発達した。第二群7頭では3500-5450回(1116日)冠動脈閉塞を繰り返しても副血行路機能は改善しなかった。即ち、15秒の虚血では生じる心筋機能異常が軽度であるので、血管新生の刺激として無効と考えられた。
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