研究概要 |
1.顕微鏡蛍光測定による細胞質【Ca^(++)】濃度変化測定法の確立。 (1)、初代培養ラット大動脈血管平滑筋細胞に【Ca^(++)】指示色素Quin2およびFura-2を生理的条件下で取込ませ、細胞質微小領域(<1μ【m^2】)の蛍光変化を顕微鏡測光することによって、細胞質【Ca^(++)】濃度変化の連続測定を可能にした。 (2)、この方法を用いて血管平滑筋細胞の細胞内【Ca^(++)】貯蔵部特性を検索した。ノルエピネフリン(NE),ヒスタミン(His),カフェイン(CF),【K^+】脱分極は、細胞内貯蔵部からの【Ca^(++)】放出による一過性細胞質【Ca^(++)】上昇を引起した。NEおよびHis感受性貯蔵部は、細胞を無【Ca^(++)】液に置くと【Ca^(++)】を容易に失い、有【Ca^(++)】液に戻すと容易に【Ca^(++)】が補給された。CFおよび【K^+】脱分極感受性貯蔵部は【Ca^(++)】を失い難く、補給が困難であった。NEとHisは同一の貯蔵部から、またCFと【K^+】脱分極も同一の貯蔵部から【Ca^(++)】を放出させた。しかしながら、NEおよびHisは、CF/【K^+】脱分極感受性貯蔵部から、逆に、CFおよび【K^+】脱分極は、NE/His感受性貯蔵部から、【Ca^(++)】を放出させることが出来なかった。百日咳毒素は、NEとHisによる【Ca^(++)】上昇作用は阻止できたが、CFと【K^+】脱分極の【Ca^(++)】上昇作用は阻止できなかった。培養血管平滑筋細胞の細胞内NE/His感受性【Ca^(++)】貯蔵部と、CF/【K^+】脱分極感受性【Ca^(++)】貯蔵部は、全く別物であることが示唆された。 2.生体【Ca^(++)】濃度変化測定法の確立、(血管条片における発生張力および【Ca^(++)】動態同時測定法の開発)。 豚冠動脈左回旋枝の摘出血管条片に【Ca^(++)】指示色素Fura2を生理的条件下で取込ませ、これを生体蛍光測光することによって、張力と【Ca^(++)】動態の同時測定が可能となった。この様な方法は未だに他に類をみないものである。この方法を用いて、β刺激薬イソプロテレノールの作用をみたところ、冠動脈の弛緩に伴って、血管平滑筋の細胞質【Ca^(++)】が低下することが明らかとなった。
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