研究概要 |
生筋収縮時のミオシンリン酸化状態の解析のため、従来の変性状態で調節軽鎖(RLC)のみのリン酸化を解析する方法とは異なる、ミオシン分子としてのリン酸化状態を解析する方法を開発し、生筋に応用した。 ミオシンを非変性状態で泳動するピロリン酸ゲル電気泳動(PPi PAGE)を用いてカルモデュリン-ミオシン軽鎖キナーゼの系でリン酸化した鶏筋胃平滑筋ミオシンを解析した。リン酸化ミオシンは非リン酸化のものよりゲル上の移動度が速く、また、リン酸化状態により5つのバンド。移動度の遅い順に、(1)2つのRLCが両方とも非リン酸化のもの,(2)片方がモノリン酸化でもう1つが非リン酸化ヘテロダイマーのもの,(3)両方がモノリン酸化のもの,(4)片方がモノ,もう一方がジリン酸化ヘテロダイマーのもの,(5)両方がジリン酸化のもの,に分かれた。RLCを除いた脱感作ホタテ貝ミオシンに平滑筋RLCを結合したハイブリッドミオシンでも、RLCのリン酸化でPPi PAGE上の移動度は増加した。このようなリン酸化の効果は、骨格筋や心筋のRLCではみられなかった。大動脈や腸管平滑筋ではリン酸化によるPPi PAGE上のミオシン移動度の増加が観察された。平滑筋のRLCはそのリン酸化によりPPi PAGA上のミオシンの移動度を増加させる働きがあると考えられる。次に【K^+】で収縮させたモルモット結腸紐をドライアイス・アセトンで固定し、液体チッ素冷却の金属性ミルで粉砕しPPi PAGE試料液(高濃度のNa-PPi EGTAを含む)で抽出し、遠心上清を試料としPPi PAGEで解析した(PPi PAGE全過程を通じRLCのリン酸化状態が保存される)。その結果、筋収縮い伴い片方のRLCがモノリン酸化のヘテロダイマーミオシンと両方がモノリン酸化のミオシンが出現し、約30秒後に最大となり全ミオシンの約60%を占めた。西管平滑筋についても同様の結果を得た。来年度は各種薬物による収縮時のミオシンのリン酸化状態を解析する予定である。
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