研究概要 |
コレステロール生合成の律速酵素と言われるHMG-CoAレダクターゼの反応生成物であるメバロン酸は, ポリプレノール類の生合成とも係わりを持つがコレステロール経路とポリプレノール経路へ分岐する割合を調節する機構については不明の点が多い. ヒトにおけるメバロン酸以降の代謝を安定同位体を用いて解析する事を最終目的として昨年は血中に微量に存在するメバロン酸をガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)を用い, selected ion monitoring法(SIM)により定量する方法を開発したが, 本年度はこれに加えて, ポリプレノール類の高速液体クロマトグラフィーによる分離分析法の開発と, 臍帯血管内皮細胞の培養法について検討した. 1)高速液体クロマトグラフィーによるポリプレノール類の分離分析法の開発;東ソーCCPMポンプを用い, 流速0.7-0.8ml/min.,208nmで検出し, 逆相-C18カラム(TSK-ODS-80TM)および順相ケイ酸カラム(TSK-gel silica-60)を用いて溶媒系を検討したところ, 逆相カラムでは, isopropanol-methanol(90-10, v/v)が, ケイ酸カラムではhexane-isopropanol(98-2)が最も良い事がわかった. 逆相カラムを用いるとドリコールは鎖長により分離した. これを用いて, ヒト臍帯満期出産の動脈壁, および臍帯静脈壁のドリコールを分析したところC-80からC-105までのドリコールが検出され主な鎖長はC-90(Dolicol-18)とC-95(dolicol19)である事が判明した. 含量はヒト満期出産臍帯動脈壁で約100ug/g湿重量であった. 2)ヒト臍帯動脈及び静脈内皮細胞の培養;新鮮な臍帯を産婦人科の御好意により無菌的にPBSに保存したものを用いた. 種々のproteaseおよびcollagenaseによる内皮細胞の剥離条件を検討した結果, dispaseを用いるよりcollagenaseの方が細胞の回収量が多く, かつ生育が良かった. しかし継代後増殖せず3週間で死滅する事から培養条件を更に検討中である.
|