研究分担者 |
釘原 直樹 九州工業大学, 工学部, 講師 (60153269)
杉万 俊夫 大阪大学, 人間科学部, 助手 (10135642)
佐藤 静一 熊本大学, 教育学部, 教授 (10040031)
塩原 勉 大阪大学, 人間科学部, 教授 (40107016)
阿部 北夫 (安部 北夫) 早稲田大学, 文学部, 教授 (30014393)
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研究概要 |
(1)昭和60年7月に発生した長野市地附山地滑り災害について, 発災前後の行政および住民の対応に関する聞き取り調査・アンケート調査を実施した. その結果, 本災直前に発生した避難命令誤報騒ぎが, かえって住民の災害に対する危機感を高め, 本災時の迅速な避難を可能にしたことが示唆された. また, 既存の住民組織(自治会)の役員らによる適切なリーダーシップが効果的に作用し, いわゆる「空振り命令」が有効に利用されたことも明らかとなった. 一方, 行政側は, 災害の前兆が認められていたにも拘らず, 事態を楽観視したり, 有用な情報を十分利用せずに拙劣な意思決定を行なうなどしたために対応が遅れた. このように危機管理におけるリーダーシップと意思決定の重要性が示唆されたことを受け, この問題についてさらに詳細に検討するため, 以下の2つの実験的研究を行なった. (2)平常時のリーダーシップ行動が緊急時の部下の迅速かつ柔軟な対処行動に及ぼす効果に関して検討した. すなわち, 災害時にしばしば見られる危険の過小評価傾向を抑制するリーダーシップをリーダーシップPM理論におけるP行動, M行動の理論的下位行動形態の解明と関連づけて吟味した. その結果, 組織・集団全体の目標達成を強調するP行動, 組織・集団の連帯性を強調するM行動によって, 大局的な状況判断に基づく部下の対処行動を引き出しうることが示唆された. (3)緊急時の集団意思決定事態(緊急会議等)においては, しばしば, 会議全体の趨勢に同調するあまり, 客観的には重要な情報が検討されないまま拙劣な決定がなされることがある. この現象は「集団性思考マヒ(groupthink)として理論的にも重要視されているが, 本研究ではこの事態を防止するリーダーシップをPM論の観点から探索した. その結果, 発言を促進するP行動と会議の雰囲気を和らげるM行動の両者を伴なったリーダーシップ行動が有効であることが見いだされた.
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