研究概要 |
本研究は, 1970〜80年代の資本主義諸社会における社会-経済的変動によって惹起された社会階層の構造的変動と, そこでの人々の労働・生活や階級意識の諸局面を社会学的に解明するものである. これはアメリカの社会学者E.O.ライトの提唱により始められた, 先進工業国家15カ国の社会科学者が参加する国際比較研究プロジェクトのひとつとして, 我々が日本チームとして日本社会を対象に行われた調査研究である. 既に, 日本チームとして, 試験的に典型的な地方都市として長野県松本市でフィールドワークを先行して行なっていたが, 今回総合研究にあたり, 国際比較プロジェクトの共通質問を核とする調査票を用いて, 東京を中心とする首都圏の2,000サンプルを対象として調査を実施した. この調査データをもとに, 海外各国チームと連絡をとりつつ以下のような研究分析を行った. (1)階級モデルの比較分析(ライトモデル, ゴールドソープモデル, SSMモデル等)を日本データについて検討した. (2)階級構造マップ(対坑的階級付置仮説の検討)を日本データにより考察した. (3)現代日本社会における階級, 階層に関連した社会意識(「豊かさ」「エンブルジョアメント(ブルジョア化)」「プライバティズム(私事化, 私生活主義)」など)の諸仮説の検証を行った. (4)日本の家族関係における, 変動する役割構造を背景とする階層構造的文脈からの, ジェンダーをめぐる諸問題を考察した. 我々の研究は, これを基に次の段階で, 他のプロジェクト参加各国チームのそれぞれの社会における調査データとの比較を行なう予定である.
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