研究概要 |
現代フランスにおいて, 全面的かつ恒常的に教育改革が行われている. これらの改革のうち小学校の「三区分教授法」, 中学校の「観察課程」と「進路指導」, 学際・自治・参加の高等教育改革, 有給教育休暇をふくむ生涯職業教育制度など, 既にわが国にも紹介され, 注目されているものもある. しかし, わが国における研究は断片的なものにとどまっている. 本研究は, 68年のいわゆる「5月革命」以降の教育改革を全面性と継続性においてとらえるべく, 1.現在に至る時系列に即して, 2.政策や社会変動や21世紀社会観と結びつけ, 3.各教育段階・領域の相互連関を把握し, 4.諸改革を支える教育理論を考察し, 5.諸改革の実態を実証的に精査することを目的とした. 本研究によって, フランス教育改革の特徴とともに, わが国にも共通する現代的課題へのフランスの具体的取り組みをも明らかにすることができた. 報告書においては, 第1編「総論」で序説につづき, 教育理論, 教育改革と社会理論, 科学技術の発展と教育改革などを取り上げた. 第2編は「学校教育の改革」と題し, 就学前教育, 初等教育, 中等教育, 大学入試, グラン・ゼコール, 大学図書館の各領域を分析した. 第3編は「教育内容・方法の改革」と題し, 自然認識の教育, 環境教育, 障害児教育, 女子教育, 性教育の各領域を取り上げた. 第4編「教育行財政・経営の課題」では, 教育行政の分権化改革, 総視学官の役割, 教育政策と教育審議会, 教育財政の制度と改革, 私立学校の諸問題を分析した. 第5編「社会教育・文化政策」では, 継続職業教育, 青年・成人教育, 文化政策の発展と課題を明らかにした.
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