研究概要 |
中国都市の歴史的研究は, 近年とみに盛んになってきている. とくに中国では, 4つの現代化を推進する中で, 新しい都市を建設するために古都の研究が活発となっており, 1983年には, 中国古都学会が成立し, 古都の史的研究が多角的・精力的に行われると同時に, 古都についての土木工学・建築学・地理学など, 比較的自然科学的傾向をもつ研究もまた併行して多く発表されている. このため, 従来, 中国歴代の帝城に重点が置かれていた都市史の研究に対して, 新たに地方の中小都市についての史料の整理も多くみられるようになり, 各時代の都市についての検討が, 中央と地方との対比の中で, より立体的に行えるようになってきた. また中国における考古学上の成果も, 近年, 数多く公表されており, 比較的史料の少ない唐代以前の都市について, その住民構成など広範な材料が提供されることになっている. そこで, このような最近の研究面における条件の整備は, 中国都市の新たな展開にとって, 絶好の機会となり得るわけである. 本総合研究では, 研究の対象を, 先秦時代から明清・民国時代にかけて, 帝城のみならず地方都市にも拡大し, 都市住民・都民生活の様態についても注意を払った. この結果, 都市の転換において, 例えば唐代以前の都市の性格は, 政治的・軍事的色彩が強く, また指摘される商業的性格については, 都市においてもなお唐代以降にこれを待たねばならなかった. 市制は, 都市の商業性を抑圧する側面が少なくなく, 都市の商業的性格の充実は, 宋代次降における市制の崩壊を待たねばならなかった. そしてこのような都市の性格は, 中央, 地方のいずれの都市においても, 共通する側面をもつものであった.
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