研究分担者 |
高橋 純一 埼玉大学, 経済学部, 助教授 (30143241)
佐藤 勝則 茨城大学, 人文学部, 助教授 (40106737)
木村 和男 秋田大学, 教育学部, 助教授 (10004079)
伊藤 昌太 福島大学, 教育学部, 教授 (80007327)
井上 巽 小樽商科大学, 商学部, 教授 (10002982)
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研究概要 |
近年, 欧米における帝国主義研究は著しい進展を示しつつあるが, とりわけ, 帝国主義の社会的・政治的側面の研究についてそう言えるのであろう. これに対して, 「経済的帝国主義」, ないし帝国主義のマルクスを主義的分析については, 批判が山積している. このような研究史の状況を踏まえ, 本総合研究は第一次大戦に先立つ時期の帝国主義-それは, 「古典的帝国主義」(1900〜1914年)と呼ばれる-を, 世界経済的側面から解明することを企図した. 本研究は, ごく大掴みに言って一つのセクションから成っているが, 若干の結論を以下に要約しよう. 第一に, 第一次世界大戦前の時期に至り, 世界経済(=世界市場)は相互に密接に連関する国際的分常構造に総合され, その上に, 「多角的貿易=経済構造」が成立していた. この"multi-lateralism"は, 大不況期, とりわけ1890年代に確立し, 1900年代に入りスムーズに機能したが, 1907年恐慌化降構造変化を開始する. 但し, この変化の立入った検討は今後の課題である. 第二に, 大戦前の世界経済を特徴づける多角的貿易構造は, イギリスを「中心国」として構築されており, イギリス資本主義は「ポンド体制」=国際全本位制によりつつ世界の諸国を支配した. このため, イギリスでも世紀交〓〓に至り保護主義運動が高揚したにもかかわらず, 「自由貿易体制」が維持された. 第三に, ポンド体制下におけるイギリスと後発資本主義国, 並びに徒層諸地域との相互関連である. イギリスはインド支配を通じて国際収支黒字を獲得し, これを自治領諸国に資本輸出した. こうすることにより, 「工策的」後発資本主義国との直接的摩擦を回避した. 大戦前の帝国主義世界について, 列強の対立だけでなく, こうした相互依存の関係が十分に注目さるべきである.
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