研究分担者 |
森澤 恵子 大阪市立大学, 経済研究所, 助教授 (60137180)
片岡 尹 大阪市立大学, 商学部, 助教授 (20047393)
金 泳鎬 大阪市立大学, 経済研究所, 教授 (40177910)
中川 信義 大阪市立大学, 経済研究所, 教授 (70047158)
本多 健吉 大阪市立大学, 経済学部, 教授 (10047003)
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研究概要 |
新興工業国(NICs)研究から, さらに一歩進めて東・東南アジア諸国で1970年代後半以降進められている工業化の実態を分析し, それを「新工業化」として新たな概念を定立し, そのパラダイムをあきらかにしようとした. われわれの本研究プロジェクトは, 共同研究の成果を『アジア新工業化の展望』として集約することができ, 学界への一定の寄与をなしえたものと自負している. われわれは, 今日のアジア諸国の工業化を, 19世紀「後進国」として世界史に登場した日本の工業化との歴史的距離においてだけでなく, 帝国主義の植民地体制の崩壊ののちに誕生し, かつての植民地支配によって刻印された「後進性」と, 今日の世界経済体制のもとに置かれた「周辺性」の故に, 両者のあいだの異質性に注目して「新工業化」と呼び, その特質をあきらかにすることに努めた. 韓国, 台湾, 香港, シンガポールのNICs諸国ばかりでなく, フィリピン, インド, 中国についても各国別の実証研究をつうじて, それぞれの国(地域)の工業化の成功と挫折の実態を分析するとともに, それが内包する問題点をあきらかにした. 19世紀「後進国」が本源的蓄積の弱さの故に国家の強力的な領導を必要としたのにたいして, 今日の「新工業化」は, さらに外国資本の参加による資本と技術の供与を不可欠としている. 国家・外資, 国内(大)資本によって担われる「新工業化」は, それ故に外資への「従属的工業化」の危険をはらむとともに, 国家の権力的な開発政策が民衆排除のメカニズムを生み「開発独裁」に陥る可能性を内包している. けれども, 国際的な条件と国内での改革をつうじて, これらの悪条件を克服して「脱従属」と民主主義的な経済発展への途は可能であると考えるし, 若干の国では工業化に一定の成果を収めている.
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