研究概要 |
中層集合住棟および2階建戸建住戸の建物壁面風圧と地表面近くの建物周辺流速分布を風洞模型実験により調べている. 測定洞の断面1.5m×1.5mの風洞床面上に建物模型を規則的に配列する. 模型の縮尺は集合住棟の場合1/400戸建住戸の場合1/100である. 集合住棟模型の配列パラメータとして容積率, 階数, 風向, 街路巾および整形・千鳥の配列などを採り上げる. 戸建住戸模型の場合には敷地面積および風向を変化させる. 以上の実験により集合住棟および戸建住宅の前後差圧は, 建物の容積率が大きくなるほど減小することを明らかにし, 両者の関係を既住の実験結果と比較している. また建物間キャビティの風速は道路部分のそれに比べて小さく, その差は容積率が小さいほど顕著になることなどを明らかにしている. 風洞模型実験により求めた建物壁面風圧と建物周辺気流分布の結果を, 集合住宅の室内および2つの住棟に挟まれた中庭キャビティ空間に形成される熱環境の予測に適用している. その熱環境評価の指標としてASHRAEの標準新有効温度(SET^*)を採用する. 計算の入力条件として札幌, 東京および鹿児島の3地域における8月上旬の晴日の標準気象データを使用する. 夏季, 通風時と非通風時の室内のSET^*を計算する. その結果, 通風の温熱効果は, 容積率が小さい程, 鹿児島よりは東京の方が, 日中のみよりは全日通風の方が, 住棟方位SよりはWまたはEに45°傾けた方が, また5階建よりは10階建の方が, それぞれ大きくなることを明らかにしている. 次に住棟間キャビティの地上高さ2mにおけるSET^*の計算を行う. その結果, 容積率が大きい程, 住棟方位をSからWまたはEに45°傾けた場合, 風速が強い程, それぞれ屋外キャビティ空間の暑熱が緩和されることを明らかにしている.
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