研究概要 |
有機溶剤中毒予防規制で第3種溶剤に分類される溶剤7種のうち, 石油分溜物である5種の工業用ガソリンを, 1986-1987年に国内各地(札幌から鹿児島に至る間の12都市)より計13K検体収集し, カピラリーGCによりn-ヘキサン, ベンゼンおよび他の芳香族溶剤5種(ピークとしては6ピーク)について を行った. さらにテレピン油3検体, コールタールナフサ(試薬扱)1検体, JIS規格各種工業用ガソリン14検体および薬局より購入した家庭用「シミヌキ」ベンジン4検体についても分析を行った. 石油分溜物計134検体中のn-ヘキサンおよびベンゼンの含有量はそれぞれ平均2.57%および0.41%であったが, それぞれの濃度が分布する幅は極めて広く, 用途別に製品を分類しても, なお典型的な成分比を示すこはできなかった. ガスクロマトグラフを全体として観察すると, 石油分溜物は, O-キシレン以前に大きなピークが多数あらわれる「低沸点」群と, ピークが主としてO-キシレン以後にあらわれる「高低沸点」群とに大別される. 高毒性成分であるn-ヘキサンおよびベンゼンが含有される危険性は「高沸点」群よりも「低沸点」群の方が大きい. ゴム用揮発油は全検体が「低沸点」群に属し, ドライクリーニング用溶剤はすべて「高沸点」群に分類された. また印刷用・塗装用シンナーや洗浄剤は「低沸点」群および「高沸点」群の両群に均等に分布していた. またテレピン油およびコールタールナフサについては分析に供したいずれの検体からもn-ヘキサン・ベンゼンともに全く検出されなかった. 他方家庭用「シミヌキ」ベンジンからはn-ヘキサンおよびベンゼンがそれぞれ最高13.7%および4.2%検出され, 使用にあたっては換気に十分注意することが必要と考えられた.
|