研究概要 |
良性疾患で放射線治療を受けた集団を対象とした歴史的前向き研究では, 照射時年齢が30歳未満の若年層および女性において0/E比が有意に高率であった(酒井, 山本, 斎藤), 放射線治療後に照射野内から発生した二次がんの病理学的検討では, 基礎疾患が良性の場合には高分化型扁平上皮がんが大部分を占めること, 基礎疾患が悪性腫瘍の場合には二次がんとして非上皮性悪性腫瘍の多いことが判明した(橋本, 佐藤). 国内4施設(国立がんセンター, 癌研, 放医研, 信州大学)において治療された子宮頚がん11,855例(手術療法4,161例, 放射線療法5,725例, 手術放射線併用療法1,969例)の追跡調査では, 重複がんが325例(2.7%), 放射線治療に関連した二次がんが47例(0.4%)に認められた. 重複がんでは肺がん, 乳がん, 甲状線がん, 皮膚・骨腫瘍が有意に高率であった(P<0.05). 放射線治療に関連した二次がんの検討では, 直腸がん, 膀胱がん, 白血病のO/E比がそれぞれ3.80, 3.15, 4.17となり, 0.05%の危険率で有意差が認められた(荒居). 喉頭がんの放射線治療後における二次がん(喉頭がんの診断後1年以上経過して診断された重複がん)は, 追跡精度の良好な施設では21.7%(46/212)と高率であるが, このうち放射線誘発がんと考えられるものは2例のみで, 全喉頭がんの0.9%, 全二次がんの5.7%であった(大川). 喉頭がんを対象とした4施設(新潟大学, 慶応大学, 東京女子医大, 新潟県がんセンター)の協同研究では, 二次がんの頻度は平均12.9%で, 治療法別にみると放射線単独治療群に比し放射線+化学療法併用群での二次がん発生率が有意に低い(P<0.05)ことが判明した(酒井他). 今後はがんの集学的治療に伴う二次がんのリスクを定量的かつ総合的に評価するための研究を更に推進していく必要がある.
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