研究概要 |
(1)強力な細胞増殖因子であるepiderwal growth factor(EGF)の卵成熟への影響を調べるため, 実験動物の卵胞器官培養をおこなった. EGFは卵胞のステロイド産生を亢進させると同時に, 卵の卵核崩壊や, 酵素活性を促進した. またヒト卵胞液中にEGF様物質が存在し, かつその濃度は卵成熟度や卵胞内プロゲステロン値と相関することが明らかになった. これらの成績より, EGFは, 卵成熟に関与する因子であることが締めされた. (2)受精周辺期における生殖細胞内呼吸代謝を解明する目的で, 大量の未受精卵受精卵を同時に必要とするため, 未受精卵, 受精卵の凍結保存法の確立を第1に着手した. 自動凍結装置を使用してマウスの未受精卵, 受精卵を凍結融解後の卵の正常性を形態学的ならびに卵割から検討し, 卵の凍結保存法の安全性を確認した. さらに卵の呼吸代謝は, 体外受精によって, 受精, 卵割過程における細胞内酸素濃度の変化を認め, 卵割にともない明らかに未受精卵より酸素濃度が上昇することを認めた. さらに, 受精前後における細胞内PHの上昇を明らかにした. (3)姉妹染色分体交換(SCE)という発癌性物質や催奇形性物質に鋭敏な指標を用いて卵・初期胚がその体外培養環境より受ける影響について検討した. 血清・EDTAの添加はSCEを減少させ, 体内に存在する性ステロイド, 凍結保存, シリコン容器はSCEを変化させない. 亜鉛は生体の補酵素として重要であるが, 亜鉛の添加はSCEを上昇させた. また, 培養開始時期の胚の発育段階が進むにつれて, SCEの数は減少した. (4)受精周辺期における各種変異原の生殖細胞, 受精卵, 初期胚に及ぼす影響を観察する目的で, 放射線と, 抗腫瘍剤の一種CDDPの投与実験を行った. 放射線では明らかに染色体レベルの異常の高頻度出現が認められたが, CDDPでは胎存発育の遅延が認められた.
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