研究分担者 |
上野 陽里 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (60025541)
最上 平太郎 大阪大学, 医学部脳神経外科, 教授 (00028309)
竹内 啓 東京大学, 農学部畜産獣医学科, 教授 (90011874)
相沢 乙彦 武蔵工業大学, 原子力研究所, 教授 (70016848)
藤井 儔子 帝京大学, 医学部薬理学, 教授 (70075224)
神田 啓治 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (10027419)
浦野 順文 東京大学, 医学部, 教授 (20009989)
藤井 源七郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50012696)
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研究概要 |
本研究班が昭和43年来行ってきた中性子捕捉療法は世界唯一のもので, 脳の悪性膠腫のような浸潤性腫瘍に対し最も選択的に有効な治療法の一つであることを立証しつつある. 一定の中性子個数(おおよそ3×1012n/Cm^2以上)を与えれば根治的に有効であることが実証されつつある. 腫瘍の最深部に対し如何にして必要量の中性子を与えるかが決定的に重要な課題として科されている. これを解決するため以下の検討を行った. 1)熱外中性子の利用:現在本邦には熱外中性子を得ることのできる設備がなく, 弥生炉も速中性子を分離すると線束が減少し過ぎるため充分な研究成果があげられないままとなっている. 2)脳内水分の重水による置換:小動物に対し経口, 静注, 腹腔内注など異るルートでO2Oを投与した. LD50によって表現される急性毒性はD2OもH2Oも全く同じ値を示した. (マウス腹腔内注射でLD50はD2O, H2Oともに, 235ml/kg). D2Oを長期間使用した場合, ことに投与量を増やした場合に, 予め負荷したフェノバルビタールの排泄遅延がみられた. 中性子治療効果をたかめるためのD2O使用を妨げる程度の所見は得られていない. 3)術中金線により脳深部での中性子結束を測定すること:この実測により得られるヒト脳での半減層は2.7〜3.0cmという値が得られた. この値は, 従来の実験モデルで得られたく2.0cmに比べて35%以上大きい値となっている. この差は, 頭蓋腔内での反射, 開頭部の直径が大きいことなどによるものと思われる. このデータは重水を用いずに得られたものであるので, 熱中性子の深達性が従来考えてきたよりも良いことを示している. 1968年〜87年の間に92名の脳腫瘍を治療し, うち3人が既に10年を越え元気に働いている. これら3人の腫瘍は脳表に近かったために中性子が充分量到達したものと考えられる.
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