研究概要 |
視覚系のメカニズム解明への研究アプローチの従来からの一般的手法は、系を最末端の角膜から最上層部の大脳中枢まで、各部分に分けて、夫々を専門的立場から解明しようというものである。したがって、眼球光学系研究、網膜視物質研究,視神経研究,大脳中枢神経系研究といった研究分野が生れる。しかしこれでは各部位の機能と構造は明らかになっても、各部位がどのような機能的つながりをしているか、つまり視覚系全体がどのように成り立っているかを知ることが未解決となる。そこで本研究班はもう一つのアプローチを試みようということで結成された。即ち視覚系を構成している組織をミクロ的見方からマクロ的見方に至るまで種々の見方で見て、視覚系全体がどのように構成されているか、いわば組織の積み上げを見ようというものである。 その見方としては、分子レベルでの見方,細胞レベルでの見方,神経レベルでの見方,感覚器レベルでの見方,そして個体レベルでの見方である。研究方法としては、計4回の班会議を開催し、各レベルでの研究状況を紹介しその後、その知識を他のレベルに関係づけるための討論を行なう、という方式を採用した。成果は極めて大きく、たとえば視物質の再生メカニズムを研究している分子レベルの吉澤分担者の報告を、感覚器レベルの暗順応の研究をしている池田分担者が受けて両者の結果を比較するとか、個体レベルで色知覚の研究をしている秋田分担者と、色覚の遺伝を取り扱う深見分担者とが結果を比較するなど、このアプローチの有用性が確認された。 したがって視覚系の究明にはこのアプローチは強力な手法であることが証明されたので、成果を報告書にまとめると共に、今後更に研究グループを強化発展させることが極めて重要であるとの結論に達した。
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