研究概要 |
重イオン、π中間子はX線やガンマ線,電子線などでは研究不可能な放射線による細胞死の機構解明などができる可能性を有しており、これらのビームを利用する放射線治療の基礎研究としても種々の新しいデータを提供しうる。又諸外国に於てはこれらを用いた試験的治療も行なわれている。重イオンやπ中間子はその建設に多額の費用が要るので、何拠でも建設できるというわけにはいかない。しかし理化学研究所,放射線医学総合研究所,高エネルギー物理学研究所では、生物,医学の研究に利用可能なビームが得られる可能性があり、又得られている所もある。このような施設を利用して生物・医学の基礎研究から臨床研究を行いたいと希望する多くの研究者が居る。そこで本研究では、生物・医学研究用のために特に必要な設備の検討と部屋の設計及び配列などについて必要最小限度の条件の検討を行なうと共に、これらのビームを治療及び診断に用いる場合に、どのような条件が整えられれば有効な施設の共同利用がはかれるかを検討してきた。生物・医学系の基礎研究のための施設設備については理化学研究所で建設中のSSCリングサイクロトロンをモデルにして検討を行ない、バクテリア,哺乳動物細胞,動物レベルまでの実験研究が可能な施設設備の検討を行ない、理研以外に所属する研究者の協力を得て、その概念設計図を作成した。次に臨床目的に粒子線治療を共同利用する時の問題点として、患者の輸送の費用、患者を紹介した医師の粒子線治療への参加,治療機器のquality assuranceなどについて検討され、更に治療適応患者の選択についてのadvisory comanitteeの問題,治療データの保存と解析など広い範囲に亘る検討が行なわれ、共同利用によって粒子線治療を行なうための条件設定を行なった。
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