研究分担者 |
狩野 博幸 京都国立博物館, 学芸課, 美術室長 (90103837)
切畑 健 京都国立博物館, 学芸課, 普及室長 (80000363)
森 郁夫 京都国立博物館, 学芸課, 考古室長 (50000477)
河原 正彦 京都国立博物館, 学芸課, 工芸室長 (70000362)
金沢 弘 京都国立博物館, 学芸課, 学芸課長 (20000359)
井上 正 京都国立博物館, 学芸課, 学芸課長 (00000365)
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研究概要 |
本研究の最初の目的は, 従来の日本美術史研究がややもすれば作者や領域を限定的に選別して, 狭い範囲の調査・研究に終始する傾向が強いのに対し, 18世紀という時間をあらかじめ設定したうえで, 絵画・書跡・工芸・歴史考古の各分野の知識を結集して, 一つの時代の美術的傾向を明らかにしようとするとろにあった. 昭和61年度において, 鹿児島市にある財団法人尚古集成館の総合的な調査を実施した. 尚古集成館は薩摩藩主の島津家代々の美術・歴史資料を所蔵しており, ことに18世紀後半の藩主であった島津重豪は開明的な人物として著名であったから, 薩摩藩は18世紀当時において無視することのできない藩だったのである. 昭和62年度においては, 伊丹市にある財団法人柿衛文庫の総合的な調査を行った. 当文庫は, 芭蕉研究家として名高い岡田利兵衛氏の所蔵品が伊丹市に寄贈されて成立したものであるが, 伊丹の酒造家でもあった岡田家に近郊のみならず全国の文人墨客が立ち寄り, 数多くの作品を遺しており, 今回の調査では主としてそれらの作品が対象になった. 18世紀という時代は, 日本の歴史のうえでは鎖国時代の只中とする認識が有力であるが, 上記2件の調査のみならず, 研究分担者の個々の調査においても, 従来の認識が必ずしも妥当ではなく, 新しい表現意識に満ちた時代であったことが明らかになりつつある. それは, 中国明末清初の唯心的芸術観と西洋の実証的芸術観が, ほとんど同時にわが国に移入された時期であったということを理由としていると思われる. 今後の研究としては, 美術・工芸の分野のみならず, 哲学史・宗教史等の研究成果を援用することが必要となることと予想されるが, 当該2年度における研究上は, 所期の目的はほぼ果たせたものと考えられる.
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