研究分担者 |
小林 雅夫 早稲田大学, 文学部, 教授 (10120916)
野口 洋二 早稲田大学, 文学部, 教授 (40063549)
安斎 和雄 早稲田大学, 文学部, 教授 (80063395)
野崎 直治 早稲田大学, 文学部, 教授 (90063255)
山本 俊朗 早稲田大学, 文学部, 教授 (70063146)
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研究概要 |
本研究の特色は, 以下の諸点にある. 1.従来の異民族観=ナショナリズム研究の重点はもっぱら近代に置かれてきたが, 本研究では古代および中世にまで視野を広げたこと. 2.ひとつの民族だけを対象とするのではなくて, 様々な民族を比較史的な観点から取り上げたこと. 3.その際, 通常は無視されがちな東欧や北欧を含め, さらに比較検討の材料としてオリエントをも含めたこと. 具体的な検討対象を, ほぼ時代順に挙げれば以下のとおりである. 1.古代オリエントにおけるシュメール人とアッカド人の相互関係. 2.古代ローマ人の異民族観. 3.ローマの古代ゲルマン人観. 4.中世ヨーロッパにおけるユダヤ人観. 5.中世ポーランドのロシア人観. 6.フランス啓蒙主義者のユダヤ人観. 7.近代ロシアの東方観. 8.近代北欧における異民族観. 9.第2帝制期ドイツにおける少数民族問題(とくにポーランド人問題). 10.イギリスとドイツにおける民族意識の比較検討. 以上10のテーマについて得られた具体的な知見や成果の大要は研究成果報告書に記したとおりであり, それをさらに要約することは控えたいが, いわば抽象的なレベルでは以下の諸点が確認できた. 1.言語や文化・風習を異にする人々の集団を"異民族"として認識するのは, 時代や地域を越えたいわば"自然な"現象であり, 民族集団の自己確認にとって不可欠な要素であること. 2.そのような意味でそれぞれの民族の異民族観は歴史を推進する重要な要因のひとつといいうること. 3.だが, いっぽうでそのような異民族観の内容は, 歴史的な経験や歴史的な状況によって大きく影響されるものであること, 4.とくに近代以降においては, "自然な"側面が政治的イデオロギーへと加工されていく度合いが強いこと. 以上の諸点についても, またそれぞれの個別的テーマについても, もっと掘り下げて研究を進める必要があるが, 一応の基礎的な成果は挙げることができたと考える.
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