研究分担者 |
藤井 正三郎 (藤野 正三郎) 一橋大学, 経済研究所, 教授 (10017650)
武隅 慎一 (武隈 慎一) 一橋大学, 経済学部, 助教授 (10134876)
小野 旭 一橋大学, 経済学部, 教授 (60054318)
宮沢 健一 (宮澤 健一) 一橋大学, 経済学部, 教授 (30017511)
荒 憲治郎 一橋大学, 経済学部, 教授 (70017515)
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研究概要 |
本研究課題をめぐる共同的作業を通じて, われわれは情報化社会の各分野で発生しつつある諸変化に着目し, それが経済機構に及ぼす影響を問い, 経済政策へのインプリケーションを考察してきた. 情報化が技術革新の一形態として国民生活を被益してきたことは否定できないが, しかし同時に新たな政策的対応を必要ならしめていることも確かである. 共同研究の過程で浮上した主要な論点のいくつかを以下に記す. 1.情報化の進展によって市場の競争性が必ずしも促進されるわけではない. 生産者に有利な情報の偏在は消費者保護の必要性を高めているし, 情報設備の大型化は中小企業の淘汰や系列化をひき起こす可能性がある. 2.情報化・ME化の結果として金融取引のコストが低下し, 金融システム・金融仲介パターンの変化が発生している. しかし他面では貨幣需要関数の不安定化, 決済手段としての貨幣残高のゼロバランスが生じ, 貨幣量目標政策が困難化するという新たな事態が起こりうる. 3.国際間では情報化によって各国金融市場の緊密化が生じ, 国際的資本移動が活発化した. しかし, その結果, 実物部門と金融部門とが遊離し, 各国における産業構造調整政策がその有効性を減じている. 4.情報ネットワークは地方自治体のデータベースを拡大し, 公共サービスを充実させている. しかし, アナウンスメント効果を通じて人々の誘導が容易となり, 文化や思想の多様性が失われる危険性もある. 5.情報化の意義を異なった経済体制について検討した結果は, きわめて興味深いものであった. 例えば中国経済では情報化が遅れているため, 計画作成に必要な情報量と情報処理能力との間に大きな乖離が生じている. この間隔を埋めるために, 市場機構をより一層活用する方向への経済改革が必要であるという.
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