研究概要 |
医用診断用反射型超音波非線形パラメータ映像装置は, 音波と生体組織との非線形な係わり合いの大きさを映像化するものであり, 従来の超音波映像系での線形な特性量である反射係数や音速, 超音波の吸収などのパラメータとは異なり, 医用診断に有用な新しい情報が映像化できる. この系ではポンプ波と呼ぶ音波を生体組織に与え, それにより受ける組織の摂動の大きさを, 同時に送波するプローブ用超音波を用いて計測し, 受けた摂動の大きさの分布を映像化するが, 本研究ではポンプ波として周波数500KHz程度の超音波を用いたものと, 周波数100Hz程度の振動を用いたものの2つの映像系を新たに開発した. 両映像系は, ポンプ波の周波数が異なるため得られる医用診断情報も異なり, 前者では核磁気共鳴装置のものと類似の情報が得られ, 後者では組織の弾性的な特性に関する情報が得られる. 研究を進めるにあたり, 特に後者の周波数100Hz程度のポンプ波を用いるものに重きを置き反射型での映像系の試作を行なったが, 具体的な成果として, 反射型映像系の基本原理を理論解析により明らかにし, 実用的な医用診断装置を構成する上で必要になる信号処理手法について検討を加え映像装置を設計した. 次に基本設計に基づき, (1)ポンプ振動の駆動系, (2)組織の摂動を測定するための超音波(プローブ波)用の送受波部, (3)受波信号の中から摂動の大きさに関連した情報のみを抽出するための信号処理部を制作し, (4)これらを実時間で制御する高速制御装置を組み入れ, 医用診断を目的とする映像装置を試作した. 最後にこの映像装置を用いて, 得られる像の定量性や分解能など, 基本的特性を明らかにしたのち, IN VITROおよびIN VIVOでの映像化実験を行ない, その有効性を明らかにできた. 今後, この装置を臨床の場に適用し新しい医用診断装置として確立するとともに実用機として商品化する予定になっている.
|