研究概要 |
本研究は, 励起状態における弱い懾動を明らかにする高分解能分光法としてゼーマン量子ビート分光法を提案したものである. すなわち, 励起分子の磁場によって受ける懾動の結果生ずる微細な準位分裂を量子ビートとして観測する. ビートの周波数スペクトルは, 準位構造を反映したものでその分解能はIMHZ以下にも達する. 本研究では, 色素レーザーおよび倍波結晶を設置し, 既設の超音速ジェット分光装置と組合せ, 70〜210nmの波長域で200Gまでの磁場下における単一回転振電準位からの螢光を時間分解10nsで測定できるシステムを完成した. 研究対象の第一は, CS_2(V^1B_2)であって, その超音速ジェットLIFスペクトルの回転構造を解析し, その振動帯の帰属より励起分子が直線構造をとるエネルギー障壁の位置を推定し, 結合角約150°, 障壁約1000cm^<-1>の構造をとるものと結論した. まこ, 多くの回転準位が磁気モーメントを持つことを示し, 3重項^3A_2のA, B, スピン成分とスピン回転相互作用を介した2次懾動により1重項1B2が結合すると結論した. アセチレンのA^^〜^1Au電子状態の回転振電準位に現れる懾動構造を周波数領域の分光と時間領域の分光の両方からのデータを総合して検討した. たとえば, A^^〜-X^^〜遷移の3ν_3バンドの回転準位は数個の準位に分裂しており, それぞれの輻射寿命は大きく異なるのと同時に, ゼーマン量子ビートを示し, 大きな磁気モーメントを持つ. また, 特定の強度の磁気で準位反交差による量子ビートも観測された. これらの事実の総合的解析より, アセチレンのA^^〜振電状態における3重項および基低電子状態の相互作用が明らかにされた. 以上, ゼーマン量子ビート分光法が励起分子の固有状態の懾動構造を研究する有力な方法であることを示した.
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