研究概要 |
食品蛋白質に由来する生理機能性ペプチドの構造と作用を解明する一環として, オピオイドペプチドならびに免疫系賦活ペプチドに関する研究を行った. 牛乳K-カゼインおよび人乳ラクトフェリンのペプシン水解物から単離したオピオイドアンタゴニストSer-Arg-Tyr-Pro-Ser-Tyr-OCH_3, Tyr-Leu-Gly-Ser-Gly-Tyr-OCH_3, Arg-Tyr-Tyr-Gly-TyrOCH_3, およびLys-Leu-Gly-Pro-Gln-Tyr-OCH_3, をもとに, これらに共通する一般式として, Xa-Tyr-Xb-Tyr-Xcを得た. この一般式において, 1.Xaは中性または塩基性残基で良く, 塩基性残基の場合はK-レセプター特異性を発揮する. 2.N末端側のTyrはpheまたはTrpでも良いこと, 3.C末端側のTyrは必須である. 4.Xbは1〜4個の中性塩基, 5.Xcとしてはメチルエステルの場合活性が大きくOHの場合は活性は小さいことなどを見出した. これらのことから, 上記一連のオピオイドアンタゴニストはレセプターヒでオピオイドアゴニストの場合とは逆の方向に, 即ちアゴニストN末端のTyrが本来適合すべき部位にC末端Tyrを配向して結合しているというモデルを得た. C末端のTyrが遊離の場合でもオピオイドアンタゴニスト活性を示すペプチドとしては, Tyr-Dro-Tyr構造を含む二種のペプチドAsn-Ser-Tyr-Pro-Tyr-TyrおよびLeu-Tyr-Pro-Tyr-Tyrをそれぞれ人乳および牛乳K-カゼインの一次構造をもとに合成した. また遺伝子操作によってアミノ酸を置換することによって, オピオイド活性を導入することを前提に牛乳β-カゼインのC末端近傍のGlyをTyrに置換したペプチドを合成し, オピオイドペプチドとしてTyr-Pro-Phe-Pro-Ile, Tyr-Pro-Phe-Pro-Ile-IleアンタゴニストとしてTyr-Pro-Phe-Pro-Ile-Valを得た. ファゴサイトシス活性化ペプチドであるタフトシン(Tyr-Lys-Pro-Arg)およびリギン(Gly-Glu-Pro-Arg)の類縁配列を食品蛋白質の一次構造中に検索, 化学合成したところ, 大豆グリシニンB_1aサブユニットに含まれるGln-Arg-Pro-Argにファゴサイトシス活性化作用を認めた.
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