研究課題
一般研究(A)
ピコ植物プランクトンは細胞サイズが2μm以下のものというだけで、種類などの全体像は不明である。そこで本研究では蛍光顕微鏡で容易に識別可能な単細胞藍藻類を対象とした。海洋の外洋から沿岸、湖にも広い分布が確認され、植物プランクトン生物量がクロロフィルa量が5桁にわたって変動したにも拘らず、単細胞藍藻類密度は2桁程度の小さな変動しか示さず、外洋など植物プランクトン量の少ない水域で圧倒的に優占することが明らかとなった。外洋貧栄養域での単細胞藍藻類の増殖速度を3方法で測定し、いづれも1日1分裂程度の好適環境下での培養株と同様の速度が得られた。^<13>C、^<14>Cを標式として調べた光合成活性からもこの高い細胞分裂速度を支持する結果が得られた。分裂細胞の出現頻度から分裂を時間追跡したところ、昼夜にわたって常時分裂が見られ、特に日没前後の数時間に分裂の集中していることも判明した。現場水中での単細胞藍藻類の細胞密度は、夕方から夜間にかけて急増し、その後日出にかけて一定か、やや増加し、日出から夕方に向かって減少する傾向が観察された。減少の原因を実験的に追究し、鞭毛虫と繊毛虫による捕食圧の大きいことがわかった。以上の結果、単細胞藍藻類は現場で1日にほぼ倍加するが、同程度の捕食圧があり、現存量としてはほぼ一定の平衡状態になっていることが推察された。風などによる海域攪乱で一時的に栄養状態が好転し、単細胞藍藻類生物量が増加しても、それが以後にひきつづいて維持されることがなく、これは単細胞藍藻類の現存量のコントロ-ルが外部の栄養物質や光環境ではなく、むしろ捕食圧によって強く規定されていることを示していると思われる。
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