研究概要 |
(I)浜村ら「誘引」と一括した行動のなかにも詳しく検討すると, 誘引の初期行動と思われるクワの香気に対して一斉に頭をもたげ, 香気の在りかを探るような行動があり, これがあたかも香気にむせぶような様子に見えるので, 興奮因子と名付け, クワより抽出し, メチルエチルケトンとと同定した. (II)カイコの走光性行動と走化性行動(誘引)とを関連づけつつ, 走光性反応を停止させるクワの香気成分を追求しその単離法を確立した. (III)誘引行動を更に細分して, 誘引と定着にわけ, 極めて微量で強力な誘引および定着性を有する物質, シスシャスモン, β-フェニルエタノールを桑葉中より新たに同定した. またトリデルペンであるα, βアマリンの高級脂肪酸エステルに誘引活性があることをあきらかにした. (IV)摂食開始因子であるβ-シトステロールの活性に検討を加え, 再結により精製したβ-シストテロールの活性がヘキサコサノール, オクタコサノールやモリンの活性より強力であることを明らかにした. (V)既知の噛咬因子, モリンを中心に類縁フラボノイド化合物とカイコの感賞器官である小〓肢の感応との関係を電気生理学的に追求し, フラボノイド化合物の3, 2位の水酸基がカイコの摂食活性と関係があることをあきらかにした. (VI)誘引因子や定着因子など桑葉中に報告した種々の生理活性物質を茎本人工飼料に添加し, 摂食量との関係を調べた. その結果シスージャスモンに摂食促進因子と呼び得る活性のあることがわかった. (VII)主として化合物質による刺激という立場から摂食機構を調べて来た従来の研究に加え, 飼料の物理的因子に注目して検討をおこない, 飼料硬度が摂食を左右することを明らかにした.
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