研究概要 |
1.競争馬12頭について, 上皮小体ならびに甲状腺の電顕的検索, および血清, 糞, 尿および飼料中のカルシウム(Ca)とリン(P)についての分析をう行った. その結果, 上皮小体主細胞は休止期の状態に, 甲状腺C細胞は活性期の状態にあった. 血中のCa濃度は正常であったが, 尿中では非常に上昇しており, 競争馬が恒常的な高Ca状態にあることが窺れた. 2.骨折馬40頭および非骨折馬69頭の第三中手骨について病理組織学的ならびに力学的に検索した. 大型骨の骨折馬は粘弾性の値の高いものに多く, 種子骨などの小骨の骨折馬では値の低いものに多い傾向がみられた. 3.健康馬36頭, 非骨折馬29頭, 骨折馬17頭の血清中上皮小体ホルモン(PTH)およびカルシトニン(CT)をラジオイムノアッセイにより測定した. 種子骨骨折例は健康馬の範囲内であったが, それ以上の大型骨の骨折ではPTHおよびCT値に健康馬と比べて異常値を示すものがあった. 4.Ca剤の静脈内投与が骨組織および血清成分値にどのような影響を及ぼすか3頭の馬をCa剤を頚静脈内に1回投与して, その後毎日血清内のPTHとCTを測定した. 次に同量を毎週1回15回投与して慢性の投与効果を調べた. その結果Ca剤の投与はCTの急激な上昇をもたらすが1週間後にはむしろ下降を示した. 一方, 長期投与では馬は生体の恒常作用により正常値を維持しようとすることが明らかとなった. 5.競争中に右下腿骨を複雑骨折した馬について病理学的検索を行った. 全身に高度の石灰沈着がみられ, 血清と骨の無機, P, 値はやや低下していた. これら石灰沈着症はビタミンD剤の過剰投与時の所見と類似しており, 医原病きしての可能性が示唆された. 6.まとめ 以上2年間の研究により骨折馬における骨代謝の実態が明らかにされた.
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