研究概要 |
動物は生合成出来ないビタミンA(以下VA)を生体内貯蔵することが知られている. 主要貯蔵部位は肝臓の脂肪摂取細胞(クッパーの星細胞)であるが, 過剰のVAは更にあふれて他の臓器中にも貯えられ, われわれはビタミンA貯蔵細胞系と名付けている. この細胞系の存在意義については一般誌に「ビタミンA貯蔵細胞は何のためにあるのか」という仮説提案論文をまとめた. また, 国際シンポジウムにおいて, この細胞系についての討論を行った(61年9月). VA貯蔵細胞の組織学的検討としては, ワタセジネズミにおける脂肪摂取細胞の同定を行い, 62年4月本解剖学会第92回総会で発表した. 線維芽細胞におけるVA取り込み能の研究は2つに分かれる. その1はin vivoにおける各種線維芽細胞の取り込み能の差異であり, 第2はin vitroの系におけるVA取り込みの再現である. 第1に関する研究はスンクス(ジャコウネズミ)の腸管を用い, 標識VAを取り込み線維芽細胞との能力のない細胞の形態を固定し, 更に, 連続切片法により, この2種類の細胞を三次元再構築した. その結果, 2種類の細胞には拡がり, 細胞内小器官の分布などで差異のあることが明らかとなった. J.Electron Microscopyに投稿中である. 第2の研究は分離脂肪摂取細胞を一次培養し, ^3H-VAを与えるものと, 分離線維芽細胞を継代培養し, 培養液中へ種々の濃度のVAアセテートを投与し, 細胞内で合成貯蔵されるVAを分析する仕事である. 前者は脂肪摂取細胞がin vitroでも活発にVAを取り込むことを証明し, 「肝臓」誌へ発表された. 後者は, 培養液中のVA濃度が低い場合には細胞内でVAのパルミチン酸エステルが主に合成されるが, VA濃度を上昇すると, 細胞内のVA代謝が乱れ, 生体内では存在しない, 多種類のエステルが出現することを見出した. この結果はExp.Cell Res.誌に投稿中である. これらに平行して, この細胞系の発生学的研究も行った.
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