研究概要 |
寄生蠕虫や水棲軟体動物には, glncoseを主として炭水化物代謝の別経路であるphosphoenolpyruvate carboxykinave(PEPCK 9-succinate経路によって利用し, succinateを産生するものがある. その終末段階はfumarate還元系でミトコンドリア(Mt)の電子伝達酵素で触媒され, fumarateが電子受容体として機能しATPが生成される. 本研究では, 棲息環境の異なる回虫, ウエステルマン肺吸虫, 中間宿主貝類の本系を比較生化学的に明らかにし, 本系の生理的意義を統一的に考察することを目的として行なわれた. 当研究室の以前の研究から, complexIIIのチトクロム(Cyt)bとは区別できるCytbが回虫および肺吸虫成虫Mtのfumarate還元系に関与することが明らかにされていた. 本研究では, まず呼吸領ComplexIIの精製法を確立し, これらのCyt(回虫Cytb558, 肺吸虫Cytb556)がcomplexIIに局在することを明らかにした. 回虫Cytb558の酸化還元電位は-34mVであった. 同様なCytbが牛心筋MtのcomplexIIに存在することが知られているが, この〓m値(-185mV)はよりネガティブである. 寄生虫complexIIのCytbはsuccinateで容易に還元されるが牛心筋complexIIは還元されない. 回虫と肺吸虫のcomplexIIは牛心筋と同様いずれも4つのサブユニット(sub)からなっている. 回虫のCytb558は高速液クロマトグラフィーによる分析から, 小さな2つのsubに相当することが明らかになった. 分子量の最も大きなsubの分子特性は三種間で似ており, 免疫学的相同性も高い. しかしながら, 2つの小さなsubは異なった性質を示し, 免疫学的相同性もほとんど示さなった. 回虫complexIIは高いfumarate還元活性を示し, 牛心筋complexIとロドキキノンでNADH-fumarate還元系を再構成することができた. これはロドキノンが本系の一成分であることを示している. 中間宿主貝類に関しては, 殺貝剤存在下, 嫌気条件下での浸漬後の有機酸分析結果から, 宮入貝と平巻貝にPEPCK-succinate経路がin vivoで作働していることが示唆された.
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