研究概要 |
胸部X線画像のデジタル化に関して, レーザイメージスキャナによる画像入力を検討した. この結果, 測定濃度はマイクロデンシトメータによる測定濃度の約2/3の値に, 分解能は2〜3lp/mmに低下することがわかった. 胸部X線画像の最適な表示に関しては, ウインドウレベルとウインドウ幅の検討を行なった. その結果, X線画像の肺野と縦隔における平均値(M)と標準偏差(SD)を求め, ウインドウレベルは画像のM-1/2SD, ウインドウ幅は4SDを基準にして, ほとんど画像を臨床的使用に耐えうるようなレベルで表示することができた. また肺野を観察するためには画像反転も診断上有用な表示方法であると考えられた. この他, ルックアップテーブルを非線形化することで診断が容易になることがわかった. 画像処理に関しては, コントラスト強調法(ヒストグラム均等化法)および輪郭強調法(アンシャープマスク法)を検討した. この結果, これらの画像処理によってCRT画像のダイナミックレンジを補い, 新しい胸部X線画像診断法を構築できる可能性が示唆された. さらに診断能の評価法に関しては, 人工的小円形陰影を用いた手法を開発した. ここではアクリル球を用いた基礎実験を行い, かつ臨床画像に重畳してその有効性を検討した. また, デジタル胸部X線画像のデータ圧縮に関して, ブロック量子化DCTを用いたデータ圧縮の方法における符号化方法を3種類検討した. この結果, 胸部X線画像のデータ圧縮にブロック化DCTを用いる場合, ブロックサイズとして16×16あるいは32×32, 符号化方法として閾値法を用いると画質の劣化を抑えたデータ圧縮が可能であるという結果が導かれた. また, 臨床画像の劣化についての検討結果をまとめると, スコア法による評価では圧縮率1/5と1/10は臨床上使用に耐えると思われた. 以上のことより, 画像処理, 画像表示による, デジタル胸部X線画像の診断能の向上が示唆された.
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