研究概要 |
高尿酸血症(痛風)の成因については, これまで肝における尿酸合成機構や腎における尿酸排泄機構が研究されてきたが, 骨格筋のはたす役割はまったく不明であった. 私共は糖原病VII型に認められる高尿酸血症の分析から, 骨格筋から放出される筋原性因子によって高尿酸血症が発現するという新しい病態概念"筋原性高尿酸血症"を明らかにした. 本研究の目的は筋原性因子の本体を解明するとともに, 他の代謝性ミオパチー症患郡において"筋原性高尿酸血症"がひろく存在することを証明することである. (1)基礎的研究:(電気的刺激下筋運動に伴う筋内のプリン体代謝)ラット白筋では筋運動の結果ATPは減少し, 減少分はIMPとして筋内に保持されるがその一部はさらに異化代謝される. 赤筋ではプリン体異化代謝は活発ではないが, 虚血条件下では明確に認められる. (2)臨床的検討:(阻血下前腕運動試験)糖原病III, V, VII型患者では, 肘静脈血中の乳酸はほとんど増加しないが, アンモニア, イノシン, ヒポキサンチンは著明な増加反応を示した. 同様の反応は後天性疾患である特発性副甲状腺機能低下症に伴うミオパチーにおいても認められた. (エルゴメーター運動試験)糖原病III, V, VII型患者では全身循環血中のアンモニア, イノシン, ヒポキサンチンは著しく増加し, 引き続いて血中尿酸も増加した. この時尿酸の尿中排泄量の増加も認められ, 血中尿酸値の上昇は尿酸合成増加によると考えられた. (長時間のベッド安静)糖原病VII型患者では, 長時間安静のみで, 血中ヒポキサンチンは急速に正常化し, 尿酸濃度は徐々に低下した. 尿中尿酸排泄量も減少した. 以上より, 糖原病III, V, VII型など筋におけるエネルギー産生不全を示す病態では共通して, 運動時に骨格筋のプリン体異化が著しく亢進しており, 過剰に血中に放出された代謝産物(イノシン, ヒポキサンチン)により高尿酸血症が発現する.
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