研究分担者 |
上村 参生 大阪歯科大学, 歯学部, 助手 (70168665)
小出 武 大阪歯科大学, 歯学部, 助手 (30121817)
熊崎 護 大阪歯科大学, 歯学部, 助教授 (80066985)
熨斗 秀光 (慰斗 秀光) 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (20103088)
神原 正樹 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (90103085)
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研究概要 |
前回(昭和61年度)の中間報告では, ESCAおよびZeta電位の条件設定の結果であった. 今年度(昭和62年度)に行った実験成績の結果は, フッ素処理後のHApの最表層面は, フッ化物溶液の種類により, それぞれ異った分析結果を示した. すなわち, NaF処理HApの最表面は, ESCAおよびZeta電位ともにHApと近似した値を示したが, 2〜4層(10nm)では, Ca_<2p>のピーク位置は, 348前後の値を示し, FHAp形成が確認された. APF処理HApの最表層は, 負のZeta電位が低い値を示す傾向を示し, ESCAによるCa_<2p>のピーク位置は, 348前後の値を示し, FHAp形成が確認された. APF処理HApの最表層は, 負のZeta電位が低い値を示す傾向示し, ESCAによるCa2pのピーク位置が最表層では348.1, 表層下では348.4〜348.7の値を示し, Zeta電位およびESCAともにHAp表面でのCaF_2形成が確認された. SnF2処理HApの最表面は負Zeta電位が高い値を示す傾向を示し, ESCAによるSn3dのピーク強度が最表層で特徴的に高くなり, 最表層でのSnOF2形成の存在が示唆された. また, 各フッ化仏溶液処理時間および回数による影響はみられなかった. HAp, FApおよびCaF_2のESCAおよびZeta電位の結果から, フッ素処理HAp. 表面でのFHApのフッ化度の違い明らかに出来る可能性が示唆された. フッ素処理エナメル質のESCAによる深さ方向への分析結果はNaF処理では, Fの相対濃度が最表層で最も高く, 深くなるほど減少する傾向を示し, APF処理では, 20mmで最も高い値を示し, 以後深くなるほど減少する傾向を示した. このことから, APF処理エナメル質の最表層は, 20〜40mmの深さにCaF_2の形成が著明であることが明らかになった. SnF_2処理では, Fの相対濃度がNaFおよびAPFに比べ最も低い値を示し, 最表面でのSn3dのピーク強度が著明であった. 以上のことから, 現在まで明確にされていなかったフッ素処理HApおよびエナメル質の表面および表層下での状態が, ESCA分析とZeta電位との関連で解明可能になることが判った.
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