研究概要 |
1.制御主体の違いが不安反応に及ぼす影響:二人の被験者が電撃に対し直列につながれている状況を設定し, 回避行動を行なう主体の違いが不安反応の程度に及ぼす影響について実験的に検討した. 制御主体が自分である場合の不安が最も高く, 最低度の不安は相手まかせの他者制御条件で見られた. 2.不安反応に及ぼす他者共在の効果:回避不可能な脅威事態においては, 共在他者が自分と同じ運命にあり, しかも親和的関係にある場合に最も不安が低くなることがわかった. 脅威の回避可能性の如何にかかわらず, 他者が共在してその他者に依存できることは, 脅威事態における不安を低減させる方向に作用するものと考えられる. 3.社会的孤立の実態研究として, 在宅一人暮らし老人の孤独感とソーシャル・ネットワークの関係についての調査を行なったところ, ソーシャル・ネットワークの大きさと孤独感との間に有意な相関がみられた. 4.恒暗閉鎖環境下の長時間隔離が睡眠・覚醒に及ぼす影響:恒暗閉鎖環境に被験者を72時間孤立させ, 環境情報の急激な遮断がヴィジランスに及ぼす影響を測定した. 24時間ごとの平均睡眠時間は漸減するものの, 全被験者に著明な過眠が見られた. 過眠は中程度睡眠の現象と対応しており, 徐波睡眠やレム睡眠の変化は少なかった. 白日夢や幻覚の体験には大きな個人差が見られ, 知覚・認知障害が孤立に必ず随伴するわけではないことが示された. 5.社会的隔離事態における共在他者が親和と遂行に及ぼす効果:3名集団を閉鎖環境室に隔離して作業を行なわせ, 一人ずつ退出させて2時間後に被験者を室内に孤立させた. 被験者の不快と不安は一人残されたとき最高に達し, 課題への意欲は最低になったが, 被験者は情緒支持的な共在者よりもむしろ課題志向的な他者の行動を希求した. 不安への対処方略として課題解決行動を行なったものと考察された.
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