研究概要 |
地方の国際交流の類型としては, 文化交流を中心とする国際親善や国際理解を目的とするものがあり, 姉妹都市提携あるいはパーティーやホームステイも含まれる. これを親善型と呼びたい. また経済交流と目せるものがあり, 資源や加工商品の輸出入をはかることを目的としており, これを経済型と呼びたい. 別の分類軸としては交流主体によるものがあげられる. 国, 県レベルの自治体, 市町村レベルの自治体, 民間団体の区別ができよう. 国際交流についての先進自治体とみなせるものは神奈川県・兵庫県・北海道・沖縄県である. 北海道には北方圏構想があり, 北方地域の提携による経験交流をめざしている. また, 市レベル・民間団体の活動も活発である. それにたいし, 沖縄県では国レベルの沖縄国際センターがあり, また県レベルの活動も顕著であるが, 市あるいは民間団体の活動はそれほど活発でない. このふたつの道県において, 札幌市民と那覇市民を母集団とする住民意識調査をおこなった結果得られた知見は, 以下のとおりである. (1)両地域とも実際の活動経験者が5%に満たず, きわめて僅かであること. (2)しかしながら, 国際交流にたいする意欲は一般的に高いこと. (3)意欲の高い住民の属性について両地域のあいだに顕著な差異があり, a.沖縄県については, 低所得者, ブルーカラー層が高所得者, ホワイトカラー層とならんで高い意欲をもっており, b.北海道については, 若年層, 高学歴層が意欲をもっていること. 上述の知見から得られる結論はつぎのとおりである. 自治体主導の親善型あるいは民間団体主導の経済型の国際交流は, 住民の高い意欲の組織化に成功していない. 沖縄県のばあいには, 独自の歴史的体験にもとづく平和への指向性が強い. 北海道の北方圏構想は, 住民の吸収に部分的には成功している.
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