研究概要 |
本研究の目的は, 就学している生徒・学生の教育における自立的な態度(何をいつどのように学習するかを自分自身で判断する能力)が, 彼らの学力などの知的能力や認知的側面だけでなく, ひろく自己についての概念や社会的オリエンテーションにどのような効果を及ぼしているか, という問題をインテンシヴな調査研究によって明らかにすることにある. このために, 本研究では教育における自立性の概念を検討し, 教育の実態的複雑性, 管理の厳格性, および単調性の3つの概念が重要であることが知られた. また生徒・学生の心理的な諸機能に関しては, 知的柔軟性, 重視する価値観, 自己概念, 社会的オリエンテーションなど多様な側面をとりあげ, その他余暇行動, マス・コミュニケーションとの接触行動, 性行動をも包含した. この結果, 学業における自立性と知的能力, 一般的な生活における自立性, さらに向上心との間には, 密接な交互作用効果が作用している, という仮説をたて, 詳細な質問票を作成した. 関東7都県から無作為に抽出した生徒・学生172人に対し調査を実施し, 90名より回答を得た. これは, 調査の複雑さを考慮すれば, 十分な成果とみなされよう. これらの生徒・学生の両親については, すでに詳細な調査を実施してきており, 親子間の関連もしくは断絶をみることができるだけではなく, 父親・母親の効果を統計的にコントロールしても, なおかつ本研究の仮説が妥当するかどうかを検証することができるからである. 本研究では, 収集されたデータに細かなコードを付し, 前述した仮説を検証しうるようにデータを加工し, 基本的な集計表の分析からはじめ, より複雑な分析へと進めている. 最終的な結論を得るためには, まだ若干の時間が必要であるが, 予備的な分析において, 本研究の仮説がおおむね妥当していることがみられる.
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