研究概要 |
住民自治組織としての町内会組織は, 行政からはその連絡組織としての機能を期待される一方で, 住民自身の活動として取り組むべき組織目標はあくまで自主的に決定されるという性格を有している. 従来から親睦機能に加えて必要に応じて地区の問題解決のための要求機能を果たしてきた町内会は, 組織の目標と運営の自主的決定の原則が重視されているにも係わらず, 住民の政治的社会化の経験が日本的特異性を有していることから, 主体的な参加意識が低く, 活動内容の地域差が小さいことから個性的な活動を展開しているものは少ないことが明らかとなった. 主たる分析結果は以下の通りである. 1.組織の加入率は高く, 未加入世帯の増加や住民構成の異質化によって運営そのものがコンクリクトをかかえるようになっている. 組織の規模は都市化のレベルによって多様であるが, 組織の規模は活動内容を規定しており, その理由としては, 世帯数が少ないことと一戸当りの会費が300円以下の組織が6割以上を占めていることに示されるように財政規模と組織の規模の相関が高く, 組織としての運営を困難にしている. 2.組織の活動水準の規定要因としては, 会館所有の有無, 世帯数規模, 広報紙の発行の有無等があげられる. 3.親睦活動が停滞していることについての組織内部の要因としては, (1)行政の環境基盤整備が進むにつれて町内会の環境・衛生活動の低下がもたらされ, 参加者の減少を招いたこと, (2)住民のライフスタイルの変化に町内会の活動が対応していないことがあげられる. 4.今後の課題としてケーススタディによるインテンシブな調査を重ねて住民の政治的社会化の構造を町内会組織の性格から明らかにすることを計画している.
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