研究概要 |
現在, アメリカの連邦・州・地方各段階で進められつつある教育改革に関する諸資料を収集し, 研究した結果, 次のようなことが明らかになった. 1.現在行われている教育改革は, 教育における公正を大切にしながら優秀さを追求するものであり, かつて「スプートニク・ショック」にもとづき行われた英才教育中心の改革とは, 原理的に明確な違いがある. 2.現在行われている教育改革には「二つの波」がある. 3.「第1の波」は, 1983年の全米優秀教育審議会による『危機に立つ国家:教育改革への緊急命令』を中心として, 多数の教育改革案が相次いで提出され, 討議の輪がひろがり, 各州で教育改革が議題にのぼり, 具体的施策が実施されていった, そのうねりである. そのなかでは, ハイスクールの卒業要件を引き上げ, 教師に資格試験を実施し, 職業段階制を設け, あるいはまた1日または1年の授業時数を増加することなどが企図された. 4.「第2の波」は, 1986年以後に見られる改革の高まりをいい, そのきっかけは「教育と経済に関するカーネギー・フォーラム」による『備えある国家:21世紀の教師』であった. ここでは, 「第1の波」においては余り手のつけられなかった問題, 例えば教師養成教育, 学校比較, 学校行政〓の査定, 教科書などが焦点になっている. 5.各州では, 教育改革への取組が徐々に進み, オハイオ, フロリダ, カリフォルニア, サウス・カロライナ, テネシー, アーカンソー, ノース・カロライナ, オレゴン, ペンシルヴァニア, テキサス, ヴァージニア, ジョージア州から積極的な取組がはじまった. 6.各州・地方の教育委員の教育改革にたいする意識は明確な変化を見せているが, 一般市民のそれについては必ずしも大きな変化は見られない.
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