研究概要 |
(1)わが国の臨教審が6年制中等学校の創設を提案して以来, 文部省の中等教育改革の推進に関する調査研究協力者会議でも, また教育課程審議会でも, ともに一貫制教育の功罪にかかわる多角的な視点からの論議が展開されてきている. 本研究プロジェクトでは, こうしたわが国での論議を念頭におき, 諸外国における中等教育の制度・内容・方法にかかわる諸問題を分析・検討する作業を通して, わが国中等教育のかかえる問題状況をより明確にすべく, 関連する基本資料の蓄積に努めてきた. (2)最終報告書には, わが国の中等教育制度成立過程に関する論稿をはじめ11か国の中等教育制度・内容の現状と改革動向についての論文16点を収録した. このうち中・高一貫に関する論稿7点は日本・アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・スウェーデンの6か国における制度再編を論じたものであるが, カナダ・ソ連は一貫制教育を学習指導・生活指導・進路指導の面から肯定的に採用している. アメリカ・イギリスは一貫制から分離教育への傾向を強めつつあり, またフランス・西独・スウェーデンは, 戦前期に高等教育に接続するエリート教育機関として機能してきた一貫制教育を否定する立場から前・後期に区分し, 後期段階では生徒の自主選択に基づく継続教育との接続を図りつつある. (3)最終報告書収録論文16点中の10点は, アメリカ・イギリス・フランス・西ドイツ・スウェーデン・フィンランド・ソ連・中国・カナダの9か国における普通・職業教育の統合問題を全面的もしくは部分的に取上げたものであるが, これらの国では普・職統合を指向する何らかの措置を講じており, 統合化が各国に共通する課題とされている実態が明らかにされた.
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