研究分担者 |
河内 祥輔 北海道大学, 文学部, 助教授 (80013283)
井上 勝生 北海道大学, 文学部, 助教授 (90044726)
松沢 弘陽 北海道大学, 法学部, 教授 (10000655)
田原 嗣郎 北海道大学, 文学部, 教授 (50000550)
田中 彰 北海道大学, 文学部, 教授 (70000560)
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研究概要 |
研究成果報告書は, 「明治維新と国際関係」および「近代成立期天皇制の国民統合」という二つの部分から成っている. 前者は, 天皇制による国民統合を容易にし, また国民統合のあり方を特徴的なものとした「国際的諸関係」を検討したものであり, 後者は, 明治維新ののちにつくり出された天長節の祝祭の実態を明らかにすることによって, 庶民の伝統的な祭の習慣や天皇崇拝に, 国民的な形式を与えていく過程を明らかにしてものである. 国際関係による衝撃が, 日本の国民統合に有利に作用した原因として, つぎのようなことが考えられる. 第一に, 当時の対外的な危機が, それほど切迫したものではなく, 長期的で計画的な対応が可能だったこと, 第二に, 当時の日本が, 政治的な集中と経済的な発展のための準備がある程度できていたこと, 第三に, したがって日本は対外的な緊張を国民統合のために有利に活用できたということである. 天長節の祝祭は, はじめから宮中や官庁の式典と庶民の奉祝行事とをセットにした新しい行事としてつくり出されたものであって, この計画には外国の外交官の助言が働いており, 実際にもっとも盛大な行事が行なわれたのは, 神奈川府や長崎府のような開港場であった. これは, 天皇崇拝が, 対外関係を利用しながら, 近代的なデザインを加えられている一つの例である. 当面の研究成果は以上のとおりである. 維新政府の問題, 辺境の統合の問題, 前近代の時代との関係の問題など, この短期間では成果としてまとめるには至らなかった諸問題も多く残されている. 蒐集した史料の分析をさらに進め, 今後にその成果を発表していきたい.
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