研究概要 |
本研究では, 昭和61, 62年度にわたり, 研究計画にしたがって東北地方における縄文時代貝塚の調査を行い, 縄文時代の文化, それを支えた生業活動のあり方, その発展の過程を追求した. また, その研究, 調査方法の樹立をめざした. 2年度にわたる研究で, 予想以上に大きな成果をあげることができた. (1)貝塚研究のための基礎資料の作成を行った. 岩手, 福島, 宮城, 青森県の400遺跡をパンチカードに登録した. そしてこの資料にもとずいて三陸海岸などの貝塚踏査を行い, その現状の把握に努めた. (2)61年度には, 研究計画にしたがって, 内陸の典型的な主淡貝塚である宮城県田尻町蕪栗の中沢目貝塚の調査を実施した. その結果, 約190枚の薄い層を発掘した. 全土壌を1mm目の篩にかけ, 遺物を採集し, その堆積層の動物遺存体と人工遺物の組成を分析した. また出土アサリの成長線を算定し, 水堆積層の形成された季節を推定した. この季節推定により, この地域での生業活動のあり方が浮彫りとなった. また様々な生活残存滓の投棄サイクル, 時間的幅などを追究するデータがえられた. 土器, 骨角器など生活資材, 物質文化のあり方を考える上で貴重な資料をえた. そして, 北上川下流域の後・晩期縄文文化のあり方を究明する手掛りがえられた. (3)62年度には, 内陸主淡貝塚との比較研究のため, 北上川河口にちかい河北町皿貝貝塚の調査を行った. その調査方法は, 中沢目貝塚の場合と同じである. この貝塚は内湾奥部にいとなまれたアサリを主とする貝塚である. 晩期中葉第3期に属する. その動物遺存体の組成は, 内陸淡水産貝塚ときわめて対照的である. (4)今後, この地域比較研究を深めていく必要がある.
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