研究概要 |
1)日本の親子契約の実状, 昨年度の調査につづき, 今年度は, 群馬県の前橋市・高崎市,栃木県河内町,北海道の伊達市・芽室町・大野町において親子契約(家族協定農業)の実施状況に関するアンケート調査を実施した. その結果の集約は, データの確認作業などにより終結していないが, 現在までの分析では, 実施農家は二種に大きく分かれている. 一つは, 親子契約にメリットをみとめ, 他の人にも勧めたいとする人々と,他はこれに何のメリットをもみとめず, 関心さえ薄い人々である. 両者は, 都市化地域と農業地域とに分れるものでなく, 両地域にまたがっており, 地域差よりは, 経営と家族関係のあり方により大きく影響されているように思われる. しかし両者を通じて, 文書契約についての異和感が共通に存在している. それを越えるメリットをみとめるか否かが, 上記の二種の人々の分岐点をなしており, 最終分析においては, その点を明らかにしたい. 2)親子契約の源流について するために, 日本の隠居慣行・譲状の研究を群馬県について実施した. これによれば, 日本の伝統の中にも, 必要があれば, 老後の扶養につき文書で契約ないし契約的なものを行なうことがあったことがよく分かる. そのことは, これからの親子契約の発展の可能性の検討についても役立つであろう. このような伝統がどこで切断されたかについて定説はないが, やはり家制度の構築過程に求められるのではないか, というのが私たちの現在の仮説である. いずれにしても, 現在日本農家は未曽有の困難のなかにあるが, 農族農業経営の維持・存続・発展のための一つの手段として, 親子契約をみとめている農家が存在していることは事実である. そのことは, アンケートに対する農家の対応の中で確かに感じられた.
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