研究概要 |
1.データベース作成-対象とする郡の約60村の土地台帳のうち, 1895年・1925年の2年次分を電算機に入力し, 機械可読の形とすることができた. この部分については, 今後様々な関心から電算機で分析できるようになった. 2.集計作業-データ入力の完了した村落のうち22ヶ村については, カーストごと, 及び土地所有規模別の土地所有面積を集計し, 集計表を完成した. この時期の土地所有についてこれだけ詳細な表が多数村について作成されたことは, 今までなく, 重要な基礎資料といってよいだろう. 3.分析とその結果-集計表の完成した22村のデータを分析し, 1895年から1925年の間におけるカーストと土地所有関係の変化を明らかにした. その中では, 以下のことが明らかとなった. (1)1895年には, バラモンや上位カーストの保有する土地が大きかったこと. (2)1895年から1925年の間に, 今まで土地保有のほとんどない「不可触民」や下位カーストの土地保有が増大し, 逆にバラモンなどの土地保有が減少したこと. (3)この間の零細な土地保有者の倣増は, 通説のいうような, 人工増加による土地細分化によっては充分に説明されえず, 「不可触民」などの零細な土地保有者が新たに生まれたことによっておこった現象であること. (4)バラモンなど大規模土地所有が減少する一方で, 中上位カーストの一部が商業活動と結びついていて土地保有を拡大させていること, しかしながらこの2つの変化はカーストを区別しないで集計した場合は現象的には表されてこないでいること, などである. 全体として, インドの農民層分解に関する通説的見解とそれを批判する見解との対立を止揚しうる, 総合的構造的視点が実証的に示されえたと考えている. 4.集計表と分利結集を公刊した.
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