研究概要 |
本研究ではまず, VDT作業を行う時の基礎となる人間の視覚情報処理のメカニズムを明らかにした. ここではVDT上の表示情報を確認するまでの処理過程を3つのサブプロセスに分割し, その各々を個々にモデル化した. VDT作業による人体への影響に関しては, まず視機能と中枢神経系の疲労に焦点を当て, CRT表示およびハードコピーといった視覚表示媒体の影響を2つの実験により明らかにした. その結果, ハードコピーよりCRT表示によるVDT作業の方が, 疲労の影響が大きいことがわかった. さらに, この影響は視覚機能だけでなく, 大脳機能にも及んでいることが示唆された. 次に, VDT作業におけるシステムの応答時間, 作業ペースなどの作業負荷の影響を認知, 判断, および動作の各処理ごとに, 疲労および作業パフォーマンスの観点から解明した. 作業内容の疲労に与える影響を調べる為に, 数種類のVDT作業に対して, 作業を心理的に特徴づける因子を抽出し, その因子と疲労との因果関係を解明した. その結果, 作業価値, 作業の変化性ともに乏しい作業は, 整理的機能の低下, および心理的疲労感の激しい過疲労状態に陥ることがわかった. また, 作業価値, 変化性とも豊かな作業は, 整理的機能の低下はみられるが疲労感の和らぐ抗疲労状態になることがわかった. 以上の結果をふまえ, VDT作業の人体に与える影響のうち, 特に中枢神系, 精神疲労に焦点を当て, チャンネル・キャパシティの減少により疲労を測定する方法を提案した. この提案方法を異なる作業, および異なる作業環境下での作業に適用した結果, 作業による疲労だけでなく, 作業の違い, および作業環境の違いによる疲労度の影響を検出することができ, 本提案方法の妥当性を示すことができた. この方法は種々の利点があり, 実際のVDT作業場への応用が可能と考える.
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